どうも穂苅です。何気なくTwitterをごく個人的に始めていたら、ちゃんとブログも書けとハヤシの目が怖かったので、シカオくんについてのつぶやきはブログで書こうと思います。ま、もともと「約束」については140文字で収まるわけもなく、何回かに分けて書こうと思ってたんだけど、たしかにそれならブログに書けばいいんですね。来週いよいよリリースだしごそっと書き込みます。長いです。くどいです。個人的です。
スガ シカオのライブのMCで、ファンだという女性と食事をして、席を立った隙にその女性のipodのリストをのぞき込み、「ス」にも「S」にも入ってなかったというネタがあって大笑いしたものだ。ipodって本当にプライベートで個人的で、所有しているCDなどは友人に見せたり、棚に並べて一人で悦に入ったり出来るけど、ipodはその人の本音や、隠すことの出来ない人格が反映されてしまう。このシカオくんのMCは、だから本来的な自虐がリアルで、むちゃくちゃ面白い。
俺のipodにも極私的で趣味性に満ちたソングリストが納められている。長年親しんだ曲達は、お気に入りという概念を通り越して、旧知の友人のような存在。いつも何かを語りかけてくれるし、こちらのそのときの感情を優しく吸収したりもしてくれる。
音楽という、いわば趣味が高じて職業にしている身にとっては、さて、自分が制作に関わったり、世に問うたりした曲は個人的な嗜好と一致するだろうか?答えは、今でもわからない。あまりにアイデンティティを一致させる思考を自他から強制していくために愛憎がない交ぜになってしまうからかもしれない。少なくとも俺のipodにはオーガスタの楽曲はソングリストに入っていないのだ。ただ一曲スガ シカオの「夕立ち」を除いては。
そもそも邦楽自体がそれほど入っていない。山下達郎「メリーゴーラウンド」、吉田拓郎「高円寺」、佐野元春「complication shakedown 」など、ごくわずかだ。無意識に選曲したものだが、この邦楽の曲を眺めているとひとつのことに気付く。その時代にひとつの(あくまで俺の)エポックメイキングとして衝撃を与えられた曲なのである。
シカオくんの歌の、俺にとっての最大の魅力、そしてエポックメイキングとなったこと、誤解を受けやすい表現なので、今まで口に出したことがなかったが、それは「盛り上がらない美メロ」にある。
制作スタッフとしてアーティストに曲を意見する時に使いがちな、あるあるフレーズのひとつに「サビで、高いメロディーで歌い上げて、大きく開いていこう!」がある。確かにリスナーにリーチしやすいし、感情を現しやすいのだ。たいていのシングル曲は、まずこのハードルがあるし、ヒットソングを聴いてみればたしかにこの条件にはまるものばかりだということに気がつく。
スガ シカオの歌は最初から、この風潮に真っ向から異を唱えるものだった。サビは盛り上がるどころか閉塞するものが多いし、ライブでも一番声を張り上げるのはお客さんを煽るMCで、だったりする。シカオくんの音楽は少なくともメロディー上では盛り上がらないように慎重に作られている気がしてならない。
歌で伝えるべき感情は叫ぶことに代表される熱情だけではないはずだ。つぶやいたり、ささやいたり、愚痴ったりするところに本当の感情はまろびでている。まさにシカオくんはこのことをいち早く表現した。「愛しているんだあああ!」と大声で叫ぶのではなく、あくまでも美しく、絶妙なタイミングで「愛している」とつぶやく。どちらが結果、深く聴くものの感情に訴えるかは明白だ。
そう、あくまでも美しいことが大切だ。「夕立ち」は全編この「盛り上がらない美メロ」で構築されている。そして今回発表された「約束」はこのスガ シカオの(俺的な)王道路線の最新進化バージョンに他ならない。
歌い出しは「夕立ち」のように優しくはない。焦燥感や不安感は歌詞と相まってずしりと深い。「夕立ち」よりもさらに沈んだ地点から歌は始まるのだ。言葉を的確なタイミングでたたき込まれた後に、その「美しく抑制されたサビ」がはじまる。クライマックスまで歌い手の感情はフラットで、やっぱり「希望」はこの曲でも踏みつぶされる。この自虐的な気持ちよさ。そして曲が終わり、気がつくとまさに「胸のやらかい場所」に確実にシカオくんが投げ込んだ、言葉で表すことの出来ない何かが刺さっていることに気付く。お家芸としかいいようのない「ならでは」な聴後感。
これこそが(俺にとっての)スガ シカオの真骨頂なんだ。
今朝通勤途中で、俺のipodのソングリストに新たに追加されたスガ シカオの「約束」を聴いていて、そんなことを考えました。
初回生産限定盤[CD]:AUCL-57 ¥1,785(税込)
●スガ シカオ、初のオト・グラフィック集(48P・BOOK+CD)~シングル「約束」誕生のきっかけとなった、2010年のロンドン公演に密着した貴重なドキュメンタリー写真とをロングインタビュー。見る、読む、聴く・・・スガ シカオのリアルな言葉と写真で綴る初のオト・グラフィック集!
↑これがおすすめです。本当に豪華仕様。内容も素晴しい。内緒だけどアリオラさん結構出血しているようです。